…それは遠い昔のおとぎばなし…。

かつて…天界・魔界・人間界の三界を苦しめた、一匹の龍がおりました。
『七つの大罪』の名を持つ、七つの頭。
巨大な体と、固いうろこ、複数の口から吐き出す業火はあまりに激しく、
天使と悪魔が加勢をしても、中々倒れる気配がありません。
哀れに思った神様は、自らの魂を削って二本の剣を作り、
天界と魔界に一本ずつ与えました。
聖剣クロワと、魔剣サクリファイス。
その二つの剣を持って龍は七つに割られ、人間界の各地に封じられました。
平和が三つの世界に訪れ、長い時を刻み…。
…しかし。

ある日、この『アストリア』の国に、封じられたはずの龍の一つが現れたのです。

伝説にある通りなら、七分の一の力しかないはずの龍。
しかしその力に相対するには、人間の力はあまりに弱く…。
平和だったアストリア国の民は嘆き悲しみ、
ただ龍の力と火炎にひれ伏すだけでした。
もう何も出来る事はない…。
戦いに出向いた人間たちすべてが絶望を感じ、諦め、
天を仰いで逃げ出した…その時。

白き光を纏い、天使と悪魔に支えられ、雲霞にたたずむ影一つ。
左手に掲げるのは、まばゆいばかりの水晶の聖剣『クロワ』。
右手に構えるのは、月光を纏う闇色の魔剣『サクリファイス』。
伝説にある二本の剣を携えて、『彼』は龍の前に現れました。

彼の名はユリウス。
小さき国『アストリア』が誇る、類い希なる美貌と知恵、力を併せ持った騎士です。
彼は輝ける二振りの剣を、軽業師のように軽く、鳥のように美しく、
龍に突き立てました。
傲慢の限りを尽くした赤い炎は、彼の手に翻弄され、
みるみるうちに白煙となって消え失せます。
見事、彼は悪龍を討ち滅ぼし、
名実共に歴史に名を刻む『勇者』となったのでした。

「…まさか再びその剣と、相まみえる事があろうとは…。
だがしかし…このままワシが眠ると思うな。
…お前に呪いをかけてやろう。
お前は忘れる。今までの知識、経験、思い出…すべての時間がゼロとなる。
巻き戻る…巻き戻る…愛しい人も、愛しい時間も、すべて巻き戻る!
…お前は無力な子どもに還るのだ…!」

…花が散るように。
…龍の体は千々に散らばり。
…霧のように、はかなく消えていきました。
…また一時の眠りについたのです。
…そして深い深い洞窟の底、
さっきまでは戦いの場であった場所に残るのは、小さな子ども。
『今まで全て』が消え去った、無力な魂があるだけでした。

その小さな手を、『あなた』が手に取り、誓う。

「ぱーぱ? まーま?」

今この時見た、美しく気高き勇者の魂を。
…もう一度この世に蘇らせてみせると。
(C)CYBERFRONT 2007 Illustration:Azusa Yuhki(Zodiac)
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